暫く前よりお客様からDENON DN-308Fの回転が不安定になっているとの相談が有りました。
その間にトーンアームDA-308Nの経年劣化でトレース不安定はレストア修理していましたがDN-308Fの回転不安定は本体を送っていただかないと修理不可能なのでお互いに悩んでいました。
コロナ以前は80kgの物でも未梱包で「ヤマト小さな引っ越し便」でオーディオ機器を取り扱っていたがいつの間にかオーディオ機器は取り扱いを止めてしまい簡単に送っていただくことは不可能になってしまいました。
木箱にでも入れて梱包をすれば法人扱いの運送屋さんは扱い可能ですが個人では不可能でお客様と私でお互いにアイディアを出し合い相談したが良いアイディアは出ずです。
いよいよメンテナンスしないとダメだとなり相談の結果キャビネットを残し全てのパーツを取り外し梱包して「佐川急便運送保険付き」で送ってはどうかとなりましたが分解して、完了後の再組み立ては誰がするかの問題が沸き上がりお客様に業者さんを探して貰う事になり、幸運なことに「オーディオ機器の修理」も「PAオペレート」も「録音」もできるプロフェッショナルな方に巡り合い順調に事が進み仙台にDN-308Fの部品が到着しました。
それまでの分解作業などをお客様がビデオ撮影して記録に残したのでリンクを張らせていただきました。
DN-308Fを分解している様子
https://youtu.be/grTppm8PdEM?si=IfRj_wU76nILshjp
分解した内部基板やモーターなどを梱包している動画
https://youtu.be/NkUJG2aT3Zg?si=LoC44TMsw22rYxWp
お客様のお宅で分解して送っていただき私がメンテナンス後に再度お客様のお宅で組み上げたら元に戻るのかの実験も有りお互いに手探り状態での進行です。
エ~ 梱包業者さんにもお願いしたのと云うぐらい完璧な梱包でいよいよ私にバトンが渡りました、オーナーズマニュアルに回路図や技術資料も掲載されているので今までの経験値でオーバーホールに入ります。
電源基盤より始まりました、電解コンデンサーは年数的にESRの劣化は当然なので全て交換になります。
音響機器なのでコンデンサーであれば何でも良いと云う訳にはいきませんので今までの経験で信頼性のある国産とVISHAYを選択しました。
安定化のためにフイルムコンデンサーが多量に使われています、業務用は流石ですね、ですから安定して動作出来るんですね。
整流用ダイオードは音響機器には重要な部品で整流できれば良いだけでは有りません。
最低でもSBD(ショートキーバリアダイオード)ですが今回は更に上位の超スピード・逆回復時間特性抜群(整流管に近い)更に高耐圧なのでS/Nと情報量増加に優れているSiC-SBDを使いました、自分の耳で確認済の音楽性に優れているドイツ製です。
使用するハンダも何でも良いとはいきません、何しろ部品と部品を繋いでいるのはハンダです、何でも良いハンダを使えばなんでも良い音楽が出力されてしまいます。
部品の働きにより部分的にハンダを選択しています、入力と出力は同じハンダですが中間の増幅部はそれなりの鉛入りハンダを使用しました。
サスガに業務用機器ですね使っているスイッチやボリュームなどは信頼性が高い物が投入されていて交換しようにも時間が経っていることも合わせて入手が困難ですが入手できた切り替えスイッチやランプなどは新品交換しました。
モーターのオーバーホールはオイル含浸用フェルトとオイル交換のみですがメタルベアリングとシャフトは酸化したオイルを取り除くのもあり慎重に何度も何度も研磨しています。
洗浄乾燥後にmusicalityとaudiosoundに優れたEMT純正オイルを適量注入しました。
コントロール・フォノイコライザー・モーター・フロントコントロール部と進み最後に各種チューニングに進みます。
いよいよ測定調整に入ります、発信測定はVP-7723Bで他に中華製オシロとカウンターで決めています。
肝心なところはVP-7723Bクラスが良くもう一台と国産オシロが欲しいのですが個人自営業には中古でも高過ぎなので一台で接続変更を何度もして測定しています。
キャビネットが無いのでトーンアームは仕事での試聴用に作ったアームベースを使用して行いました、どんなトーンアームにも対応できます。
ついでに自作のノンオフセットアームでも遊んでみました。
当たり前ですが業務用音楽送り出し機は流石にアヤフヤな所もなく素晴らしい、自作ノンオフセットアームも良い、インサイドフォースキャンセラーは如何なものか。
安定化のためとバーンインがてらレコード演奏を暫く楽しみ返却の相談と打ち合わせ後にお客様の都合に合わせて返却しました。
到着後に元通りに組み上げている動画
https://youtu.be/oNZ7pVEneUA?si=qkVUjK0HFyCOuByo
お客様に届いて元道りに組み戻して貰い二人で試聴したとの連絡が有りました、二人とも未だピンとこないとの事それはそうですハンダや部品が未だ新品で青臭い音楽表現の筈。
数日後本人から素晴らしく帯域が伸びているが嫌らしい表現ではなく今まで聴こえてなかった楽音も聴こえてきたとの報告に「ヨッシ」とコブシは握りませんでしたがニヤリとしました。
お客様の自宅で分解初めからビデオ撮影して記録して有り私の文面よりも説得力が有ります。
これで大型音響機器の運搬は嫌がられることなく無事に運搬・レストア修理・返却が出来ることが分かりました。