長年の懸案だった分解方法と構造が解明できました。
重針圧用なのにオーバーホール後のテスト試聴ではAT-OC9ML/Ⅱを
針圧1.5gで難なく再生でき音場定位も素晴らしく良く新しい発見でした。
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FR-64 & 66 シリーズ完全オーバーホール修理
¥45,000-(税・送別)
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レコード音楽ファンには絶対的なトーンアームメーカーにFidelity-ResearchとSAECが今でも君臨しています。
中でもFidelity-ResearchのFR-64SとFR-66Sが半世紀近く経っても人気が衰えず、販売当初の金額の数倍もしています。
私は新品購入し使用した経験が有りませんが販売店勤務時代に中古のFR-64SやFR-66Sが取り付いたプレーヤーを何度も聴いています。
その時の印象は楽器の輪郭はハッキリするが演奏者全員がスピーカーの中央から集団で飛び出して来る不思議な音場再現に不満が有りました。
販売店勤務時代の20年ぐらい前にお客様よりFR-64Sのインサイドフォースキャンセラー(IFC)のアームが折れていて、更に針圧ダイアルが重く回し難いとの事で修理依頼が有りました。
アームの修理にとても興味が有ったのでイケダラボラトリの池田さんに分解方法や部品入手方法などをご教授いただこうと電話を入れました。
最初に奥様が出られて池田さんに代わられ要件を話したら折れたIFCアームは入手不能ですそれは無くても良いですと簡単に言われました。
理論上は無いとダメですが実用上は無くても大丈夫との事、針圧ダイアルが重くて廻らないのは「トーンアームの寿命」です、オーバーホールしますから送ってくださいと言われました。
私が勉強のために修理したいのでダイアルの蓋の外し方を教えてくださいと言うと、ア~それは外れないようにハメ込んであるので外れませんよと・・・・・・
修理する時は壊して外し新品の蓋と交換するとの事、それでは私には不可能と判断しその後は別の話をし電話を切りました。
オーバーホール金額は確か5万円台ぐらいだったと思います、結果的にお客様の同意が無く未修理で返却し私の勉強材料にはなりませんでした。
ビンテージ系修理業を始めて15年Ortofon RMG-212と RMG-309 は250本以上、SME SAEC MICRO DENON などを合計せれば数えきれないほどオーバーホール修理しました。
なぜかFR-64/66シリーズは5本ぐらいだけです、分解できないと頭に書き込んで有ったので少なかったのか不思議です。
今回壊しても良いからオーバーホールしてくれと依頼が有り針圧ダイアル蓋を壊すこともなく外すことができ、内部構造も分解順番も熟知しデータにも残しました。
こんなに面倒な構造のアームを考え製造したなと感心します。
トーンアームの動作に一番影響あるバーチカル及びトラッキング用のベアリングも世界一精密なNSKのベアリングに交換しこだわりの専用オイルを注油できました。
トーンアームの性能はベアリングとオイルで決まると言っても過言では有りません、それぐらい重要です。
ここまで書けばお分かりと思いますが20年前に池田さんに寿命ですと言われたことが理解できる筈です。
ダイヤルにはグリースを更にベアリングにはグリースよりも耐用年数の短いオイルが注してあります、グリースが酸化して固くなったと云う事はオイルは既に酸化枯渇しているとの事。
他の修理箇所はフロントコネクターピンを抜き出しクリーニング・絹巻インナーケーブルの経年硬化でOFCケーブルに交換・両端のコネクターの古いハンダも吸い取り新しいハンダで接続・トーンアーム全体表面を磨きクリーニングも出来ました。
完了後にデジタル針圧系を使用して点検していたら0.05g単位で針圧調整が出来たのには驚きでした、今までは何となくゼロバランスが取れていたのがメインウエイトにチョット触れ動かしただけで針圧計で読み取れます。
いよいよ試聴に入ります、私の仕事場用のプレーヤーはGARRARD-401とアームベースは別固体になっていてどんなトーンアームでも無条件で繊細なチューニングが出来て使えます。
レコード愛好家にはすでにお分かりと思いますが垂直・水平が完璧であるとスクラッチノイズは皆無で素晴らしいS/Nで楽器が全て分離しスピーカーの中心から演奏者が纏まって押し出てくることは有りません、全員キチンと整列し後ろに居る楽器は後ろに定位します。
今まで思っていた不思議な楽器定位や団子状の押し出し感は全くなく極自然な音場感で楽しい音楽表現です。