お客様よりTD-124とTD124/Ⅱのフルメンテナンスの依頼が有りました。
主文を最初に
① TD-124は神経質だ
② Mk/Ⅱは相当進化した
③ 経験が少ない者はそれなりの工具と測定器が必要だ
④ 最終仕上げは音楽感性が重要
TD-124はボディーに塗装剥がれや凹みなどが多数有り、更にモーターは手で回しても分かるぐらい重く使用していた形跡も見当たらない物でした。
当然センタースピンドルも油分は全く無く可哀そうなぐらいのTD-124です。
オーディオ機器特にビンテージ物は見た目が重要で程度が良いと再生される音楽まで良く聴こえる不思議な感覚が有ります。
オーナーに再塗装とフルオーバーホールをお勧めしました、相当悩んだ末にOKの連絡を頂いたので作業続行です。
今回お願いした塗装屋さんは初めての方で仙台市内で拘った仕事をしている研究熱心な職人さんでした。
初めての塗装屋さんなのでオーナーに連絡する前に塗装屋さんとコミニケーションを取るため現物をお見せして雑多な話や工場見学をしながら仕事に拘りが有るのか探りに行きました。
色んな話をし私と同じような臭いと拘り感のする方で親近感が有り一度で意気投合していました。
月が替わってから完全に分解しボディーだけにして持ち込み採色はどの部分が良いかなど詳細に打合せして2週間で作業完了との返事をいただき期待に胸躍らせ帰宅しています。
予定の2週間の一日前に連絡が有り引取りに伺い事務所で色んな説明を受け私の嗅覚もまんざらではないなと一人ご満悦。
採色・古い塗料の剥離・下地作り・プライマー塗り・下塗り・本塗とその都度写真に収めていたのは流石です、更に色番号や作業内容もデータ化しPCに保存して有るとの事、別のTD-124を持ち込まれてもそっくり同じに作業できるよと頼もしい事をサラリと言われました。
塗装をお願いしている期間中にモーターのオーバーホールを済ませて仮組していました。
仮組とはどうゆう事と不思議に思う方はTD-124のメカに詳しい方です、TD-124のモーターは構造が神経質で組み上げた後の調整如何で回転速度が遅かったりし調整に時間が費やされます。
私は以前デジタルタコメーターを持っていなかったので4本の組みネジはトルクレンチで均等に締め付けシャシー取付け後完全な動作状態にしてからストロボでスピードの確認を繰り返して調整に時間を費やしていました。
今回からはデジタルタコメーターを使用してシャシーに取り付ける前に調整したので短時間でモーターの回転音が一番安定し更に回転速度が早いポイントを探すことが出来ました。
何故早くタコメーターを購入しなかったのか悔やみ反省しています、ヤハリ測定器は持つべきです。
モーターの回転数を把握出来ているとベルトのテンションや他の回転部分が重いのも発見出来て安い買い物だったと納得しています。
最終的な機械音を確認するためプラッターを取付けアーム台座の所で聴診器を用いマシーンノイズを聴いてみました、今回はロングアーム用のボードなので面積も広く宙に浮いてる部分も有りマシーンノイズが増幅されているようです。
フローテイングプレーヤーを長年使っている私のレコードプレーヤーに対する感覚では我慢の範囲を超えています、ノイズの中から楽音を聴き分けているようです。
ベルトを外してモーターだけ回転させても振動音が大きくモーターのアイソレーショングロメットを新品に交換し更にシャフトにシリコングリースを塗りました、これで相当改善されましたがまだ納得の出来る範囲では有りません。
更に振動を遮断しようとアイソレーショングロメットを二段重ねにするためにモーター吊下げボルトをグロメット2個用に作り直しました。
これで更に改善されましたがベルトのテンションが強いと又もや振動音が増えてしまいます、弱い物に交換しゴム専用クリーニング液でベルト接触部を丹念に清掃して振動音が何とか我慢の範囲に収まり一安心。
ちなみにTD-124/Ⅱはマシーンノイズも少なくインナープラッターの違いだけでは無いようです。
モーターと他の回転系をオーバーホールしたため作業前より100v駆動でも回転速度が早くなったのでマグネットを調整し調整ノブ中心で定速にしています、残念ながら100v駆動のデメリットが出てきました消耗しているストロボ用ネオンランプが暗くてストロボドットが全然見えません。
速度を確認できないのでは音楽を楽しむ事は出来ません微妙に早い分には分からないが遅いのは絶対音感を持っていない私にも違和感が有り気持ちが悪く聴くに堪えられません。
家庭電圧が100vなので規定電圧が120vのTD-124を120vで使う方ばかりとは限りませんので100vでも対応出来るようにメンテナンスしておかなければ片手落ちと考えます。
401用の新品ランプを仮付けしても部屋の照明を暗くしないと辛いぐらいです、120v駆動にすると明るく正常に速度監視できます。
新品ランプを探し出し120v駆動にしマグネットブレーキを強力にかけてやれば良いのでしょうが新品ランプが見つかりませんでした。
ビンテージマニアには失笑を買うのを覚悟で速度を監視できないのは音楽を聴くのにはもっと辛いのでLEDでストロボランプを作りました。
100v駆動でランプから壁までの距離をプレーヤーと同じにして照射してみると消耗した301用は前面に光が届いていません、401用新品は何とか届いています、LEDは明る過ぎるので拡散キャップを被せて120vの401用新品と同じぐらいの明るさに調整しました。
やはりストロボドットがハッキリと見え回転数を確認できると安心して音楽が堪能できます、機械は信頼性が一番ですね。
ストロボ反射鏡は経年で鏡とは言い難い位の錆が出ていたので新品に取り替えました。
LEDストロボはWarm white LED2個に拡散キャップを被せ赤色を若干プラスしましたが黄色もプラスすれば良かったと後日気が付きました。
アームボードが取り付いている方がTD-124/Ⅱでボードが取り付いていない方が今回再塗装したTD-124です。